○ 3月4日に公表された地区連銀経済報告(ベージュブック)ではドル高による悪影響や先行きへの懸


これらの効果は,それぞれタイム・ラグを伴い,複雑に組み合わされて現実の需要に波及するが,ここでは一定の単純化の下に,今回のドル高・原油高修正のアメリカの景気に対する効果を「水際」の効果についてのみ,輸出入,卸売物価関数(参照)を用いて試算した()。ドル安の効果については,85年1~3月期以降ドルの実効レートを不変とした場合と比較してみると,86年4~6月期までの段階では交易条件効果が数量効果を上回り,景気に対してはマイナス要因であったことがわかる。


円高、円安がわかる!為替相場のしくみと影響 | G.金融経済を学ぶ

更に重要なことは,ドルが米国の秘密兵器であるかもしれないことである。ドルは時として米国の地政学的目的達成のために使われてきた。かつて対日,今後は米中対立の戦略手段としてドルが利用されるだろう。米国の喫緊の優先課題,中国排除のグローバルサプライチェーン構築にとってドル高は必須であると考えられる。

そもそも歴史的に見ても覇権を持った帝国の経済的優位の基本的条件は,圧倒的通貨高であった。強い通貨で帝国辺境の財を安く買いたたき,富を集中させた。帝国による収奪の実態は,暴力によって富を奪うのでなく強い通貨を使った不等価交換にあった。

昭和61年 年次世界経済報告 第3章 ドル高修正,原油高修正の影響

ドル高により世界の資金が米国に集中し,米国長期金利の上昇が抑えられていることも重要である。8%のインフレ,累計で3%にも上る強烈な利上げの中で,米国10年債利回りは3.5%以下と,大きく跳ね上がることなく推移している。この長期金利の落ち着きは,インフレが収まった時の迅速な金融緩和を可能にし,景気後退を回避する力になる。今の心配はインフレに集中しているが,いずれインフレはピークアウトし,景気後退をいかに避けるかに市場の関心は移っていくはず,その時に米国長期金利の安定がものをいうだろう。

また,石油価格低下の効果については,石油輸入数量は増加したものの,価格低下による輸入代金支払額の減少はこれを上回る大きな交易条件改善要因として作用しており,これまでのところ景気にはプラス要因であった。ドル高・原油高修正の両方の効果を総合すると,原油高修正の効果がドル高修正の効果を上回り,86年4~6月期では海外から年率約190億ドル(名目GNP比0.45%)の所得が移転したことになり,全体として景気に対しプラス要因となっている。

米国景気リスクと円高・株安の影響は? 2024年08月26日 | 大和総研

一方,石油価格の低下のアメリカの景気に与える影響は,輸入石油代金支払い額減少を通じて海外から所得が移転し,国全体の実質所得が増加し,景気刺激的に働く。ただし,石油価格の低下による石油輸入数量の増大は,国内石油生産を圧迫するため上記の効果はその分相殺される。

一方,ドル安は,輸入物価(ドル建て)の上昇が国内物価に波及することにより物価上昇要因となる。石油輸入価格の急落による影響を除くため,石油製品を除いた輸入価格によって今回のドル安の影響をみると,これは,ドルが減価したほど上昇していないが,86年初来やや上昇してきている()。したがって,これまでのところドル高修正の物価上昇効果が原油高修正の物価下落効果に打ち消されていたといえる。

[PDF] 第3節 円高の進行と海外経済が国内雇用に与える影響

第2は,価格面を通じて働く交易条件効果(価格効果)である。ドル安になると,アメリカの輸入価格(ドル建て)は外国の輸出業者がドル建ての輸出価格を引き上げるため上昇する。一方,アメリカの輸出価格(ドル建て)は,アメリカの輸出がほとんどドル建てである(98%)こと等から,比較的為替レートの変化の影響を受けにくい。このため,交易条件(輸出価格/輸入価格)は悪化する。したがって,これまでと同じ数量の輸出入を行ってもアメリカ全体としての海外への支払い額は増加し,国内から海外に所得が移転することになる。この効果は具体的には,輸入物価の上昇が国内物価に波及するという形で現われ,企業,家計の実質所得を低下させ個人消費,設備投資等国内需要を.抑制する要因となる。

これまで覇権国の米国が経済的に支配力を強めることができなかったのは,強い通貨による米国への富の移転が進まなかったからである。しかしドル高が定着するとなると,覇権国米国に自動的に富が集まる仕組みが作動することになる。今唯一の世界通貨ドルは,何の裏付けもいらず自由に印刷・発行できる米国の特権である。ただで印刷できるドルが強いならこんないいことはない。米国のみが巨額の累積債務を続けることが許されるのである。対米国債権が各国の支払い準備なのであり,米国は世界最大の債務国,イコール唯一の巨額の世界マネー供給国という体制上の利点を最大限に生かす時代が訪れたのかもしれない。


【日経】円ドル相場・人民元相場など為替の最新ニュース、債券市場の最新動向をお届けします。

世界にはさまざまな通貨があり、海外でものを買うには「円」を外国の通貨に換えなくてはならず、その際の交換比率が為替相場です。経済動向をあらわす指標として、テレビ等のニュースでは「本日の東京外国為替市場の円相場は……」と報道されます。つまり、円と外貨との交換比率は日々刻々と変動しているのです。例えば、円を外貨に換える需要より外貨を円に換える需要が多ければ、円が買われるとともに外貨が売られ、「円高」が進行します。「ドル」を商品と見立てると、例えば対ドルで「1ドルが105円から104円になり、1円、円高になった」というようにいいます。この場合、「1ドルの価値が105円から104円に下がった」ことになるため「ドル安=円高」になったわけです。
円やドルなど通貨間の交換比率は、需要と供給の関係で決まります。従って、需給関係が変動すれば、為替相場も変動します。

米経済先行きに緊張感 「悪指標」でドル安 利下げの時間軸左右も

円高のメリットは、円の購買力を国際的に引き上げるとともに、輸入品を通じて国内物価を引き下げる効果が期待できます。また、外国製品が安く買え、海外の投資資金が流入しや株式の価格を押し上げます。円高のデメリットは、日本からの輸出製品が値上がりし、日本製品の国際競争力が低下します。また、外貨建ての資産が目減りします。
円安のメリットは、外貨建ての資産価値が高まり、輸出製品の海外での価格が下がって輸出産業は好調になります。円安のデメリットは外国製品が高くなり、海外へ投資資金が流出しや株式の価格が下がります。

5日のドル円相場はISMのサービス業景況感指数が予想を下回りドル安が進んだ。米国経済の悪化への警戒感が高まっている。

以上のように,純輸出の動向と成長率の間にはその時々の経済情勢や為替等の動向が介在しており,両者を単純に結びつけることはできない。しかし,純輸出が成長にプラスに寄与するためには,少なくとも,輸出が増加するとともに,総需要が輸入に浸食されないよう,国内製品の競争力を強化することが必要である。今回のドル安はこの意味で効果を持つものと考えられるが,以下では,マクロの景気,物価に対する影響にしぼって議論を進めることにする。

第57回「日米金利差とドル円レート」 知るほどなるほどマーケット

まず,ドル高修正のアメリカへの景気の影響については,第1節でみたように次の二つが考えられる。

三井住友信託銀行が資産運用に役立つマーケットコラムをお届けします。世界経済や金融市場の動きについて、わかりやすく解説します。

ドル相場が急伸している。主要国通貨加重平均でみたドル指数は過去一年間で92から110へと20%上昇した。このドル高が,①輸入物価引き下げによる米国内インフレの抑制,②米国人の対外購買力の増大,③米国への資金流入による米長期金利の抑制,となって何重にも米国経済を支えている。同じインフレ下ではあるが,1970年代の高インフレ時代にはドル安であったこととは好対照で,当時とは真逆の正の経済効果をもたらしている。まさにドル高は米国にとっていいことずくめである。

近年は円安・ドル高だと聞くけど、ビジネスに一体どんな影響があるのだろう?」 「為替相場の変動がビジネスや貿易.

インフレリスクに対しては,ドル高は輸入物価が安くなるので好都合である。米国は年間2.8兆ドル(364兆円)の財輸入がある。前年比10%のドル高は2800億ドル(37兆円)の輸入価格低下効果をもたらす。そのすべてが米国輸入業者にもたらされると仮定すると,米国の年間消費額は17兆ドルなので,それだけで消費者物価を最大限1.3%押し下げる(=実質購買力を押し上げる)効果があると計算される。

徹底解剖!アメリカ大統領選2024(7) ~為替・金融政策への影響

第1は,貿易数量面を通じて働く効果(数量効果)である。ドル安は,アメリカの輸出価格(輸出相手国通貨建て)の低下による輸出数量の増加がアメリカの需要を拡大させるとともに,輸入価格(ドル建て)の上昇によるアメリカ国産品の相対的有利化が輸入数量を減少させ国内生産を活発化させるため,この効果はアメリカの場合,景気刺激的要因になる。

もしハリ」なら無風!?米大統領選後のドル円相場を専門家6人が大予測

「円」を外国の通貨に換える際の交換比率が為替相場です。円やドルなど通貨間の交換比率は、需要と供給の関係で決まり、需給関係が変動すれば為替相場は変動します。

アメリカ大統領選挙の日本経済への影響です。東京市場では、株高と円安が大きく進んでいます。中継です。

ただし,①ドル安が輸入価格にフルに反映されるまでには,タイム・ラグが存在し,今後さらに輸入物価の上昇が予想されること,②原油価格が86年8月のOPEC総会以降反発したこと等,インフレ懸念材料もないとはいえない。しかし,ホームメイド・インフレの指標となるGNPデフレータ,賃金の推移をみると,伸び率(前年同期比)は80年以降急速に鈍化してきており,84年以降は4%以下の低い水準で安定している()。したがって,インフレ期待もかなり鎮静化していると考えられ,前述のような輸入物価の面の問題はあるものの,ホームメイド・インフレ発生の可能性は少ないと考えてよいであろう。

アメリカの政策金利動向とその背景にある経済動向、そして世界・日本経済への影響についてまとめました。

なぜ今ドル高なのかだが,米国の利上げにより金利差が拡大してきたことが直接の原因であるが,それでは説明できないほどの値上がりである。その根本的理由は,米国国力の圧倒的優位が鮮明になったからではないか。米国は世界最大の石油ガス産出国かつ純輸出国である。また世界最大の穀物輸出国でもあり,エネルギー穀物価格上昇は米国にとってプラスである。製造業の衰退が強調されるが,先端産業での競争力は圧倒的である。中国を除く世界のインターネット・サイバー空間を米国のGAFAM5社が支配しており,その技術力イノベーションの力は他国を寄せ付けない。また基軸通貨ドルを通して世界の金融を支配している。

アメリカのトランプ氏が大統領として返り咲くことになりました。経済施策が大きく変わる見通しです。私たちの生活や為替への影響を考えます。

ドル高になると中国との経済格差,金融格差は開くことになる。日本,ユーロ圏に続いて米国も近い将来,中国に経済規模追い抜かれると信じられている。しかしドル高・人民元安が進行していくと中国はいつまでたっても,米国に追いつけなくなる。

ドル円相場は米国の7月雇用統計発表前の水準に戻った。ただし日米金利差縮小傾向は崩れておらず、円高圧力が続きそうだ。

一方,これまでのアメリカの実質成長率の伸び率と純輸出の寄与度の関係をみると,両者は85年以降ほぼ平行して動いている。しかし,過去についてみれば,72~73年,74~75年,77~78年,81~82年を除いて両者は,ほぼ反対の方向に動いている。83~84年の景気拡大期では,純輸出が成長にマイナスに寄与しつつも,成長率は高まっている。

円安が止まらない理由 | | 森永卓郎 | 毎日新聞「政治プレミア」

言うまでもなくドル高は中国だけではなくすべての通貨でインフレ圧力を強め購買力を低下させる。またドル建て債務を抱えている多くの新興国の返済負担を高め,金融困難を引き起こし,それが国際金融危機を引き起こすとの懸念もある。しかしそれがドル高を止める要素とはなりにくいのではないか。むしろ米国金融への依存度を強める方向で働くかもしれない。