2025年のドル円相場見通し | 三井住友DSアセットマネジメント


4月10日、日本銀行の総裁が10年ぶりに交代となりました。総裁は変わったものの、これまでの大規模な金融緩和策については、当面、継続する姿勢が示されています。一方、アメリカの中央銀行にあたるFRB(米連邦準備理事会)は、歴史的な物価高を抑え込む為、22年3月以降利上げを継続しており、この金利差拡大が「円安・ドル高」の要因となっています。


【ドル円相場】円、一時155円台 米金利上昇で3カ月半ぶり円安水準

1990年に京都大学法学部卒業後、三井住友信託銀行に入社。公的資金運用部にて約6年間、受託資産の債券運用・株式運用・資産配分業務に携わった後、総合資金部で自己勘定の運用企画を担当。以後、現在にいたるまで、為替・金利を中心にマーケット分析に従事。

《本資料は執筆者の見解を記したものであり、当社としての見通しとは必ずしも一致しません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、正確性、完全性を全面的に保証するものではありません。また、作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定はお客さまご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。》

円相場 一時1ドル=144円半ばに 日米の金利差縮小の見方後退で | NHK

金利差に影響を与える日銀・FRBの行動の起点は、日米のインフレ動向にあり、ドル円レートはインフレ・データの公表時に大きく動く状況がしばらく続くのではないでしょうか。

日米の対照的な金融政策により、22年3月以降、金利差が拡大しています。

【NHK】1日の東京外国為替市場は、日米の金利差が縮小するという見方が後退し、円相場は9月30日とは一転して、一時、1ドル=144…

もちろん、金融政策運営は経済・物価・金融環境など全般を見て判断するため、円安だけで日銀が追加利上げや国債買入れ縮小を決定するわけではありません。また、日銀の行動だけでは日米金利差が大幅に縮小する可能性は低く、FRBの利下げ観測が高まるかどうかが重要です。

しかし、ドル円レートは2023年の年平均がほぼ140円、2024年は5月13日までの平均がほぼ150円と、円安による輸入物価の上昇圧力は高まっています。5月8日に植田総裁は「急速かつ一方的な円安、日本経済にマイナスであり望ましくない」と発言し、それまで為替レートへの直接的な評価を避けていた姿勢を変化させました。

日米の金利差拡大でFXに注目!米ドル/円スワップポイント増加中!

どうなると円安になりやすいのでしょうか。ひとつに2国間の「金利差」が挙げられます。例えば日本などが低金利の状態のまま、米国の金利だけが上がるとすると、世界中のお金は米国に集まるでしょう。日本の投資家が米国の債券を買おうと思うと、一度円を売って米ドルに交換することになります。その動きが積もり積もると「円安・ドル高」となるわけです。つまりと整理しておくと良いでしょう。

日米金利差を背景とした円安ドル高の流れが変化するとしたら、日米中銀の金融政策スタンスにかかっているでしょう。日銀もFRBも「2%の物価目標を持続的に達成できるかどうか自信がない」と示しているのですが、日銀は物価下振れを、FRBは物価上振れを警戒しており、政策方針が真逆です。それがこの金利差に繋がっているのですが、日米の物価動向次第では、金融政策姿勢が変化し金利差が縮小する可能性があります。


円相場、一時1ドル155円台 米金利上昇で3カ月半ぶりの円安水準 ..

こちらの図は2年、5年、10年国債利回りの日米金利差と米ドル円相場の相関係数の推移を示しています。2022年以降相関係数が上昇しています。米ドル円相場に金利差がより強く効いていると言えます。

13日は日銀金融政策決定会合での利上げ見送りが改めて報じられる中、豪ドル・円は更に上昇し、越週した。 債券

そこで、2種類のデータの関連の強さを示す相関係数で説明したいと思います。相関係数の値はマイナス1からプラス1の範囲の数字となります。プラス1に近づくと正の相関が強くなります。つまり日米の金利差拡大と円安米ドル高が起こりやすいことを意味します。マイナス1はその逆で、負の相関が強くなります。また、ゼロは相関が見られない、つまり、日米金利差は米ドル円相場に影響を及ぼしていないことになります。

円安160円に必要な金利差は3.6%=米4.8%、日1.2%で達成可能

米ドル円相場は日米金利差に対する感応度が高く、米国の金利上昇時には円安米ドル高となることが多いと言われます。市場の関心が日米金融政策に集中していることを踏まえると、日米金利差が米ドル円相場に影響を及ぼす局面が当面見込まれます。

円高圧力強まるか FOMCで利下げ決定へ 日米金利差は縮小見通し

足元ではおおむね、日米金利差と米ドル円相場は連動しています。2022年以降その連動性が強まっています。一方、1980年代後半や1990年代の多くの期間は連動性は強くないように見えます。

円高圧力強まるか FOMCで利下げ決定へ 日米金利差は縮小見通し

こちらの図は、日米の2年国債利回りの差、つまり米国の2年国債利回りマイナス日本の2年国債利回りを金利差とし、米ドル円相場と合わせて示しています。

「実需の円売り」が影を潜める中、日米の金利はどう動くか。2025年の為替相場を展望する後編。

為替相場は、購買力平価、金利差、貿易収支などの影響を受けます。最近の米ドル円相場では、日米の金利差に注目することが多いと思います。

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日銀の姿勢が変化してきたことで、日本の金利が上昇し、日米金利差がやや縮小しましたが、図1にあるように、そもそも5月13日時点の日米金利差は10年国債利回りで3.5%程度、2年国債利回りで4.5%程度と、大幅に開いているため、日本の金利の小幅な動きではこの金利差に与える影響は軽微です。実際、ドル円レートも一瞬は円高に振れたものの、すぐに円安傾向へ戻ってしまいました。

木内登英の経済の潮流――「見えてきた歴史的な円安局面の終わり」

米ドル/円のスワップポイントは、日米の金利差拡大にともない、受取額が大幅に増えています。

1ドル150円に向かう円安 ~米長期金利が上昇する原理~ | 熊野 英生

今年3月に日銀はマイナス金利を解除し、量的・質的金融緩和政策を終了しましたが、金融市場に過度の影響を与えないよう、国債買入れオペはそれまでと同様の規模で継続する方針を決定していました。しかし、その買入れ方針にはやや幅が設けられていたため、その範囲内で国債購入額を減らしたのです。これを受けて5月13日に、10年国債利回りは4月末よりも0.07%高い0.94%へ、2年国債利回りも同じく0.04%高い0.33%へ上昇しました。

円安急進の可能性も ドル円に節目か 日米金融政策の見通しは?

しかし、ドル円レートが急変動したゴールデンウイーク期間後に、植田日銀総裁の発言に変化が出てきました。5月8日に植田総裁は「過去と比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があることは意識しておく必要がある」と発言し、円安で物価が上振れれば金融緩和縮小の可能性を示唆しました。その後、5月13日には冒頭に記載したように、日銀は国債買入れオペを減額しました。

日銀によりマイナス金利導入が発表された1月末以降、予想に反しドル円レートは1割

このような円安ドル高の主因となっている日米金利差ですが、この拡大した金利差が長期間継続するとの見方の背景には、「緩和的な金融環境を当面継続する」という日銀に対し、FRBは「インフレ率が持続的に2%へ向かっているとの確信がさらに強まるまで利下げをしない」との方針を示していることがあります。このように、日銀は緩和継続で、FRBは高金利維持の方針を示す以上、近い将来に金利差が急速に縮小する可能性は低いため、投資の取引も投機の動きも円売りに傾きやすい環境となっています。

一方で、円建ての預金の解約や金融商品の売却が増加すれば、円の資金供給は減少するので、円金利は上昇すると考えられます。


米FRBは2022年3月、コロナ危機以降2年間続けたゼロ金利政策を解除し、約40年ぶりのインフレ(物価上昇)を抑制する為、金融政策を大規模な緩和から引き締めに転換させました。

円相場 値下がり 米長期金利上昇受け日米の金利差拡大との見方 | NHK

現在のドル円為替相場が1ドル=112円、3カ月ものの円金利が年利0.01%、同じくドル金利が1.1%の場合、3カ月の先物為替相場を計算すると1ドル=111.70円で(後述「直先スプレッドと先物相場の算出方法」ご参考)、直先スプレッドは30銭(111.70円-112円=▲0.30円)です。これを年率に換算すると0.30×12/3÷112×100=1.07%となり、ドルと円の金利差の1.09%とほぼ一致します。このように金利差と直先スプレッドが一致している状態を「金利平価が成立している」といいます
金利差と直先スプレッドが乖離しているとき、すなわち「金利平価が成立していない」ときはどのようなことが起きるでしょうか。分かりやすくするために、3カ月の先物相場も直物相場同様1ドル=112円だとします。この時に直物で10,000ドル買って年利1.1%で運用すると同時に、3カ月先物の10,000ドル売り予約を行えば、3カ月後には10,027ドルを確実に112.3024万円(112円×10,027ドル=112.3024万円)に換えることができます。為替リスクなしで、円とドルの金利差1.09%だけ、ドルで運用する方が円よりも有利になる(金利差益が発生する)のです。このような状況では、ドルの直物買い・先物売りが活発に行われることでしょう。結果、ドルの直物相場は上昇、先物相場は下落し、直先スプレッドは前述の金利差益を打ち消す水準までドル先安の方向に拡大していきます。この例ではドルの先物相場は112円から111.70円に近づいていくのです。このように、通常は金利平価が成り立ちます。

【NHK】10日の東京外国為替市場、アメリカの長期金利が上昇したことを受けて日米の金利差が拡大するとの見方からドルが買われ、円相場…

このような日米金利差拡大による円安ドル高の背景には、「低金利通貨を売って高金利を買う」という、いわゆる「キャリートレード」が積極的に行われていると考えられます。加えて、投機筋が「この先も金利差がなかなか縮小しないので『キャリートレード』による円売りがまだまだ続くだろう」と見込んで、先取りで円売りを仕掛けている可能性も高いと思われます。

裏切り続ける円、25年こそ反発とストラテジスト予想-金利差縮小

もちろん2004年以降も、ドル円レートが日米金利差から離れて動く局面はありました。そのため、最近の「34年ぶりの円安」などと言われる大幅円安には、金利差以外の要因も影響していると思われますが、図1に示した矢印のように、日米金利差とドル円レートの動きはかなり類似しています。日本円のような超低金利の通貨で運用しても利子はほとんど得られませんが、米国ドルのような比較的高い金利の通貨で運用する方が多くの利子を得られるので、通貨の魅力度では「ドル>円」となるのはよく知られています。